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第2話 少しの憧れ

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「あぁ~街行ったときにここのポケットティッシュくばってたっけ」

 

チラシを見ると、学生は

「月々8000円」「入会金20000円」

 

バカバカしい、ジムで8000ってアホでしょ! いったい何になるっていうんだ

これだったら塾に通って成績をあげた方がよっぽど将来性がある

 

筋田だまされてるんじゃないか?

とも、思ったが昼間の学校の光景が頭に浮かんできた

 

筋田は周りのクラスメイトに囲まれて人気者だし、転校してきたことによってクラスも明るくなった

 

実際みんなは僕を追いつこうと一生懸命に勉強していたけど、本当は勉強なんてしたくなかったのか

 

 

こんなことを考えていると、なんだか世界に取り残されたような感覚に陥った

 

 

筋田の言うように明るくなれるのかな

 

 

僕はどちらかと言えばコミュニケーションが苦手なほうだ

友達との会話にも笑顔を見せるわけではなく、無に近いと言ったらちかいかも

 

 

僕は自慢の頭をつかって自分のことを分析し始めた

 

自分の人生はたのしいか?

そうとは思わない

 

今まで僕の周りに集まっていたクラスメイトが筋田にとられて悔しくないか?

くやしい

 

笑顔で本当はみんなとワイワイしたいんじゃないのか?

そういう経験はないけど、ちょっと気になる

 

ジムに通えば自分自身何かかわるのかな?

正直全くわからないけれど、周りをみているとそんな気さえする

 

 

 

チラシに書いてあったけど、見学自由みたいだし今度の土曜日行ってみようかな

言葉ではよく言い表せないけれど、直感的に惹かれるものがあった

 

 

でも、筋田にはこのことは言えない

僕は筋田のことをよくは思っていないし「ホントはうらやましかったんでしょ?」なんて言われそうで

 

 

土曜日:ゴールデンジムの見学

僕は勉強はできるけど、小心者ということもあって初めて行く場所には緊張してしまう

ましてや今まで全く縁がなかったところだから余計に

 

なかなか透明の自動ドアに入れずウロウロしていると、後ろから声がした

 

「ウチのジムに興味があるんですか?」

 

ビックリして振り返ってみると、見上げるような大男が立ちはだかっていた

多分身長は190近くあるのだろう、ダブルのスーツをきて服からも筋肉の凄さがみてとれた

 

「あっ、いえ、見学に......」

 

「そうですか! どうぞどうぞご案内しますね」

大男は嬉しそうに僕をジムの中に招きいれてくれた

 

来た時は気づかなかったけど、ここのビルは全てゴールデンジムのビルらしい

大男は最上階である10階のボタンをおしエレベーターで上にあがった

 

 

 

エレベーターを降りると秘書2人が立ち上がった

 

「会長、お疲れ様です!」

 

左手をあげ挨拶していた

 

え!? こいつ会長なのかよ、てか案内するってジムじゃないの?

 

会長は自動ドアを開け、部屋に進んでいった

 

 

僕もうしろからついていくと、テレビで見た時あるような広い空間が目の前に広がった

よくわからない絵画はおいてあるし、虎が描かれた屏風はあるし、へんてこなツボはあるし

 

本当にこんな人いるんだ......

 

 

「どうぞ、腰かけてください」

 

かしこまった態度で僕はソファに腰かけた

 

そして大男もテーブルを挟み、反対側に大きいからだを預けた

 

訊きたいことは色々あったけど、この空間に緊張してしまい僕からは話すことができないでいると大男が口を開いた

 

「ジムの見学でしたよね? 誰かの紹介とかですか?」

 

「まぁ...紹介って言えば紹介なんで」

 

ウィーンと自動ドアが開き、秘書がテーブルにコーヒーを置いていった

 

 

「コーヒーでも大丈夫でしたか?」

 

「あっ! はい! 全然」

 

「学校でウチのジムに通っている方がいるんですか?」

 

「最近転校してきたばっかりなんですけど、筋田っていうんですけど」

 

「え!? もしかして筋田って優君のこと?」

 

「しってるんですか?」

 

「彼ね、そんなに長くは通ってないんだけどね、ジム以外にも格闘技してるんだよ。それで大会出れば優勝優勝ですごい人なんですよ、それに憧れてウチに入会する人もいるんですよ」

 

 

だから、あんなに自信たっぷりなのか、よくよく思い出してみるとなんか転校初日からオーラがあったような気さえしてきた

 

 

「もし、ウチのジムに入会するのであれば月々3000円でいいですよ! 入会金もいりません。優君の影響で随分うちも商売させてもらってますので」