14

第6話 変な日

fabo1996.hateblo.jp

 

 

 

 

 

「おい、待ちやがれ!」

 

相手の背中におもいっきり飛び蹴りをかますと、男は顔面から道路のアスファルトに叩きつけられた

 

「おまえか、うちの学校のやつらからカツアゲしたっていうのは」

 

「すいません、すいません」

 

「二度とすんじゃねぇぞ!」

 

「......はい」

 

「はぁ? 聞こえねんだよ!」

大きく拳を握るポーズをとると男はそそくさと逃げて行った

 

 

 

 

背後からいつも聞きなれた声がする

「なんだよ~またやってんのかよ~好きだよね~夏目ちゃんも」

 

 

振り返ると筋田君だ

「ほどほどにしときなよ、あんまり暴れると警察きちゃうよ」

 

 

いやだって、うちの学校のやつが脅されていたんじゃだまってられない

泣き寝入りすることが一番いけないことで、どんなときにも後悔なく生きていきたい

 

 

僕はそんな人を助けてあげたい、僕で誰かを救えるのならそうしてあげたい

 

 

僕はあれからジムに入会し、どんどんと実力をつけていった

勉強で結果を出すことはなれていたし、強くなることだって勉強することとなんら変わらないから簡単だった

 

 

会長がときどきトレーニングを見にやってきては「君は素質あるよ」なんてほめてくれるし、僕自身もそう思っていた

 

 

会長はどれくらいの実力者かわかんないけれど、見るからに相当強そうなオーラをまとっている

 

 

いくら僕がトレーニングを積んだところで多分勝てないだろう

 

 

 

「筋田くんはこれからどっかいくとこ?」

 

筋田くんな陽気そうな表情で答えた

「今日ね~これからデートなんだよね~」

 

そういえばこの前学校1人気がある女子から告白されたっていってたっけ

ほんと、筋田君は勉強以外なら何でもできるんだなぁ

 

 

「夏目ちゃんも強くなるのはいいけど、彼女の1人ぐらいいないと立派な男とはいえないでしょ、まぁ今の夏目ちゃんは昔に比べたら男だよ。でも、まだ真の男にはなりきれてはいない。男といっても漢字の漢のほうね」

 

 

筋田君は相当浮かれているようだった、テンションこそいつもとかわらないけれど

 

筋田君の彼女は誰もが付き合いたいって1度はおもったことがあるだろうモテっぷり

 

かわるがわる沢山の男達が告白してはフラれ、一体どんな男が好きなんだとおもったこともある

 

 

勉強ができるからって人の気持ちの解を導き出すことはできなかったが、筋田君はそれを解いてみせた

 

筋田君が解いたというよりかは、ただ勝手に相手が言い寄ってきただけだから解とは違うか

 

 

でもいつも筋田君は僕より一歩先にいっている、そしてそれを羨ましく思う僕

なぜここまでして惹きつけられるのだろう......

 

 

「じゃオレいくわっ!」

そう言い残し筋田君は去って行った

 

 

さて、これから何をしよう

ジムに行くか、かえって勉強をするか

 

 

少し考えても結果が出なかったから僕は歩くことにした

すると、突然腰のまがったおじいちゃんがこちらに向かって歩いてくるのに気が付いた

推定年齢70歳ぐらいだろう

ベージュのスラックスに、茶色のベスト、よく年寄が好きそうな配色だ

 

 

すれ違いざまに老人はぼそっとつぶやいた、とても意味深なこと

なぜ僕はこの言葉をきいてしまったのだろう

聞くのはまだいいとして、なぜ反応してしまったのだろう

 

「分かってない」

 

僕は立ち止まったが老人は歩き続けている、分かってないって何をだ

 

 

老人を追いかけ、すみませんと声をかけたが一向に止まる気配はなかった

さらに僕は老人を追いかけ「さっきの意味はどういうことですか」と投げかけると老人は口を開いた

 

「現実は虚像であり、理想こそが現実だ」

 

「あの~おっしゃってる意味が分かりません」

 

「だろうね、一度目を閉じてもう一度開けてあけてごらんよ」

 

 

従うしかなかった。

軽く目を閉じたがなぜか目をすぐには開く事ができなかった

心は動揺していたし、それ以上に......

 

 

もう。そろそろいいだろう

 

 

 

 

「何もかわっていないじゃないか」

今まで立っていた景色、色々もすべて同じ

 

 

 

ただ不思議なのは、老人はストレート300mもある道だっていうのに姿を消していた